『銀座旅日記』常盤新平

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今年の1月22日に81歳で亡くなられた常盤新平氏は直木賞作家で翻訳家。この『銀座旅日記 』には散歩と読書が大好きな常磐さんの日常が綴られている。

その日常の中にたまに出てくるのが、競馬。文庫の裏表紙に「故山口瞳師匠宅への年始の挨拶、競馬や将棋のお仲間たちとのつきあいも欠かせない。」とある。

以前虫明亜呂無の『野を駈ける光』について書いた時(→『野を駈ける光』虫明亜呂無)にちょっとだけ紹介した山口瞳の『草競馬流浪記』の中で山口瞳氏に“新平君”と呼ばれているのが、常盤新平さんのようだ。

『草競馬放浪記』の「水沢競馬、北国の春はまだ」に新平君が登場するが、新平君としか書かれておらず苗字は分からない。しかし、最後に新平君の苗字が明らかになる。

その日の水沢競馬の最終レースにトキワキタリという馬が出ていた。トキワは新平君の苗字である。新平君が生まれ故郷へ帰って来たのである。そのトキワキタリが圧勝した。単勝は八百何十円かだった。もし新平君がいたら、無理にでも単勝の馬券を買わせたはずである。最終だから、僕も一万円は乗っかったと思う。そうすれば、こんなミジメな思いをしないですんだはずである。この一万円札は本当は八万円なんだぞと思った。
(『草競馬放浪記』収録「水沢競馬、北国の春はまだ」より)



山口瞳氏の「最終だから、僕も一万円は乗っかったと思う。そうすれば、こんなミジメな思いをしないですんだはずである。この一万円札は本当は八万円なんだぞと思った。」という考えがいかにも競馬好きな人の考え方で親しみがわく。


『銀座旅日記』には競馬についてポツポツと書いてある。

例えば、2004年5月19日(水)の日記にこうある。

佐々木商店(煙草)、伊東屋(小学生用万年筆ペリカーノジュニア)に寄って、並木通り「琥珀亭」で一服、夕刊紙でオークスの追い切りを見る。桜花賞で単勝馬券を買った福永騎手のダイワエルシエーロに期待しているのだが。



そして、5月23日(日)の日記。

テレビのニュースを見て、オークスはダイワエルシエーロが逃げきったのを知る。単勝二一四〇円。二着スイープトウショウで馬連一万八〇円、馬単三万四三〇円。こういうときに限って馬券を買っていない。『サラブレ』という競馬誌に安藤騎手を追って「風になれ」を連載している渡瀬夏彦氏に聞いたのだが、福永騎手は最も勉強熱心だという。彼が東上すると、彼に注目して、皐月賞のときも期待した。「私だったら福永さんとかいう騎手の単勝を二万円は買っていたわね」と競馬を知らないくせに妻が厭味を言う。



奥様の厭味と同じようなこと、うちの夫もたまに言います(笑)。

常磐氏が山口瞳氏に新平君と呼ばれていたあの頃から変わらず競馬を好きでいらっしゃったのかと思うと競馬好きとしては何だか嬉しい。

『銀座旅日記』は、競馬以外の日常がほとんどなので、競馬本・小説のカテゴリで紹介するのはどうかと思うけど、まあいいか。

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