『白熱 ギャンブル・アンソロジー 競馬篇』結城信孝編



それにしても――。
馬の変調に驚かされるのは、この一ヵ月で二度目になる。
攻め馬の最中に脚を痛め、急に体調を崩した馬は過去に何頭もいた。だが、短期間にこれほどの劇的な回復を見せた馬はそういなかった。少なくとも上条厩舎に移ってからは、二度しかなく、その二度ともが、このひと月のあいだに起きていた。
(『流れ星の夢』より)



連休初日と言っても今日はどこかに出掛ける予定もないので、競馬小説でも読もうと思って本棚から『白熱―ギャンブル・アンソロジー 競馬篇』を引っ張り出して読みました。

ハヤカワ文庫から出ているギャンブル・アンソロジーには、この競馬篇の他に『熱い賭け―ギャンブル・アンソロジー カジノ篇』、『絶体絶命―ギャンブル・アンソロジー・ゲーム篇』がありますが、いずれも絶版のようです。競馬小説好きな私は『白熱』が発売されてすぐに買ったんですけど、こういうマイナーな本は絶版になるのが早いですよね。ブックオフやアマゾンマーケットプレイスなどにあると思います。

『白熱』には、競馬をモチーフにした以下の八篇の小説が収録されています。

流れ星の夢/真保裕一

馬券を拾う女/佐野洋

三十億円の期待/西村京太郎

不良馬場/宮本輝

笑顔/石川喬司

競馬場の女/遠藤周作

おさらばという名の黒馬/寺山修司

七時〇三分/牧逸馬

八篇のうち佐野洋の「馬券を拾う女」、宮本輝の「不良馬場」、寺山修司の「おさらばという名の黒馬」の三篇は別の本で既に読んだことがありましたが、他の五篇はこの本で初めて読みました。

『ホワイトアウト』等の作品で知られる真保裕一は、初期の作品に『連鎖』、『取引』、『震源』、『盗聴』、『奪取』など漢字二文字のタイトルを付けているのですが、これはどうやらディック・フランシスの影響のようです。ただし、競馬小説というわけではないみたいなので、私は読んだことがありません。

真保裕一の本で前から読んでみたいと思っていたのが『トライアル』。内容紹介には「競馬、競輪、競艇、オートレース。戦い続けるプロフェショナルの矜持と哀歓。彼らの日常にしのびよる事件。待望の連作ミステリー」とあります。実は、この『トライアル』に収録されている競馬小説が、『白熱』にも収録された「流れ星の夢」だったわけです。『トライアル』で私が読みたかったのは競馬小説だけだったので、『白熱』で読むことが出来たので結局『トライアル』を買うことはありませんでした。

でも、この「流れ星の夢」、いい競馬小説でした。真保さん、もっと競馬小説書いてくれないかなぁと思えるほどでした。「流れ星の夢」はミステリというほどミステリでもなかったので、もっと本格的な長篇ミステリを書いてくれたら嬉しいなぁ。

他に面白かったのは、遠藤周作の「競馬場の女」。ミステリの雰囲気を漂わせつつもコミカルで面白かった。寺山修司と宮本輝は好きで昔から読んでいるので、もちろん良かったです。

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