『開成調教師 安馬を激走に導く厩舎マネジメント』矢作芳人

朝日杯FS2着、2年連続マイルCS2着、そして今年の安田記念での2着と、悲願のG1制覇まであと一歩届かないまま先日引退したスーパーホーネット。今後は「オーナーの個人所有という形で、種牡馬になる予定」だそうです。そのスーパーホーネットの調教師である矢作芳人氏が書いたのが『開成調教師 安馬を激走に導く厩舎マネジメント』。

矢作調教師は有名な進学校である開成高校を卒業した後、調教師を志そうとするのだが、大井競馬の調教師である父親は猛反対。やがて認めてくれるが、代わりに父から二つの条件を提示される。

一つは「地方でなく中央競馬に行くこと」、もう一つは「外国に行って馬の勉強をすること」。当時既に地方競馬の限界と競馬の世界の国際化を予見しての事だったとか。

そして、矢作調教師はオーストラリアへ武者修行に。日本に帰国後は、競馬学校厩務員課程に3度目の挑戦で合格。修了後は栗東の工藤厩舎に配属され、その後菅谷厩舎に。

調教師試験を受験し続けるものの何度も不合格になり、14度目の挑戦でようやく合格。

本書には、調教師試験の二次試験・口頭試問で実際にされた質問などがいくつか紹介されているのですが、「今日競馬に使う馬の飼い葉桶に白い粉が入っていました、あなたはどうしますか?」などなかなかユニークな質問がありました。

念願叶って矢作厩舎を開業したものの、解散した松永善晴厩舎から引き継いだスタッフはベテランばかり。さらに引き継いだ馬に社台グループの馬は一頭もいないという厳しい状況。
ここでも、興味深いことが書いてあったのですが、坪正直厩舎から移籍してきた調教助手は、矢作厩舎と同時期に開業した河内厩舎が移籍先の第一希望だったそうです。それだけでなく、その時解散した松永善晴厩舎と坪正直厩舎のスタッフのほとんどが河内厩舎への移籍を希望していたとか(笑)

とにかくそういう事がざっくばらんに書いてあってとても面白い本でした。後半は厩舎経営術についても詳しく書いてありますし、「ファンはユーザー」として、ファンを大切にする厩舎の姿勢などにも好感が持てました。

また、矢作調教師はマスコミ取材に対する管理馬へのコメントは正直にするよう心がけているそうで、担当記者にも厩舎コメントは「なるべく作文しないでくれ」と伝えてあるそうです。新聞に掲載されるまでの過程で作文されてしまうと真意が伝わりにくくなるからだそうです。
確かに競馬新聞の厩舎コメントには全部ではないけれどアテにならないものが多い。出来がいいのにわざと泣きのコメントをするような天邪鬼な調教師もいますし。

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矢作 芳人

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矢作調教師は優駿エッセイ大賞次席を獲得されたことがあるそうです。この本もとても良くまとまっていて読みやすかったです。下手なノンフィクション作家が書いた本よりも断然面白くて私は一日で読み終えてしまいました。
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